出版体験記

出版というWORK
はじめに
「お忙しいのに、よくぞ本をお出しになりましたね。いつお書きになるのですか」と訊かれる。「いつって半端時間です。ほとんど電車の中です」と答える。相手は「へえ、電車の中ねえ」と半信半疑の表情を見せる。「こいつ、人の話を信用していないな」と思う。
『好かれるシニアは「きき上手」』の執筆動機
定年を10年後に控えた50歳のある日、定年後は「定年後の生きがい」を語る講師になろうと思いついた。これといった知識もスキルも持ち合わせていない私である。サラリーマンの多くが先送りしているテーマを語る講師なら少しは売れるかなと考えて選んだ第二の人生の職業選択だった。こう決断して準備にかかり55歳で実行に移した。
講師の生存競争は激しい。受講者の心が読める売れる講師になろうと産業カウンセラー養成講座を受講した。これが大当たりだった。職場外に友だちが少ないサラリーマンが地域社会に仲間をつくるにも、家族との関係を見なおすにも、カウンセリング学習が有効であると実感した。「この体験をお裾分けしよう」と考えたのが『好かれるシニアは「きき上手」』の執筆動機である。副題は「定年から始める産業カウンセリング学習」とした。
『生涯現役キャリア作戦』の執筆動機
講師業をスタートさせた当初は年に30回くらいだったが、リピーターや新規先が増えて昨今では年に250回出講している。受講者から「先生はやることがあって、お金も稼げて……」と羨ましがられるが、「ちょっと待った」と抗弁したい衝動に駆られる。
55歳で一本立ちして78歳の今も現役の講師・カウンセラーとして各方面からお呼びがかかるのは、現役最後の数年間に、第二の人生を目指して血の出るような模索・煩悶をくり返し、同僚が職場の担当業務を終えてリラックスしているときも、私は余暇時間を生み出して人知れずアヒルの水かきを続けた。そのお陰で今日があると思っている。
第二の人生のキャリア開発は、いざ定年になってから考え始めて間に合うほど甘くない。そのことを後進に伝えたいと思って書いたのが『生涯現役キャリア作戦』である。これには「シニア産業カウンセラーからの提案」という副題をつけていただいた。
自己啓発のすすめ
人生は長いようで短い。時間のシグマー(総和)は人生だから、悔いのない人生を送る要諦は、悔いのない時間を過ごすことだ。職場が必要とする職務能力の向上は、Off-JT(Off the Job Training・職場外訓練)なり、OJT(On the Job Training・企業内職業指導法のひとつ)なりの形で職場が従業員に強いるが、それに参加するだけでは第二の人生の準備はできない。将来必要となるであろう職務能力を想定し、また自分自身が第二の人生で発揮したい能力を想定して、先回りして自発的にキャリア開発を行うこと、すなわち自己啓発こそが重要なのだ。
とりわけ定年が視野に入ってくる50歳代のサラリーマンにとって、どれだけの余暇時間を生み出して、どれだけのエネルギーを自己啓発に割くかが、第二の人生の明暗を分けるのだ。そこを拙著から読み取っていただきたいと願っている。
余暇時間の創出 ―― 「天引き時間」のすすめ
「天引き貯金」という考え方がある。サラリーの何%かを天引きして貯蓄にまわし、残りの金額で生活する貯蓄造成のことだ。これと同じ考え方が「天引き時間」だ。貯金とちがい時間の場合は時刻を特定しなければならない。今の私は夜8時から10時までを「天引き時間」としている。その2時間は電話に出ない、テレビを見ない、もちろん夕食時に晩酌をしない。クリーンな頭脳でクリエイティブな知的作業に当てる貴重な2時間である。
昼間、電車の中で行った原稿の直しをインプットする。それを反故紙に印刷する。バッグに納めて明日の車内作業に備える。この作業をくり返して『好かれるシニアは「きき上手」』と『生涯現役キャリア作戦』の2冊が書けた。この他、同様のシニア向けメッセージ本や敬愛する良寛に関する本など3冊の著書ができた。
ときには夜の会合・会議もある。365日欠かさず天引くわけには行かない。年間250日確保が目標である。それで年500時間のマイタイムが生み出せる。
私の知人は現役時代、正午のベルと同時に税理士受験の勉強を始め、13時まで昼食抜きで頑張って、見事一発で税理士試験に受かった。余暇時間は意識的に生み出さない限りできない。朝型の人もあるだろう。ご自分のバイオリズムに合わせて好みの時間帯を決め、自己啓発に勤しみ、第二の人生めざして雄雄しく飛び立っていただきたい。
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年に250回……ただいま、出講中。 |
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書斎にてマイタイム。 |


