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詩集 梅雨滂沱 著者:梅崎利通

作業療法士の著者が、重度の患者さんの苦しみや悲しみに寄り添い、紡ぎ出した珠玉の言葉の数々。第一部はALS(筋萎縮性側索硬化症)の、第二部は筋ジストロフィーの患者さんに関する詩である。患者さんの家族や医療関係者が精一杯努力しても、結局は病いに克てない。日を追うようにして進行していく患者さんを目の前にして為す術が無い。一人の人間としてどう対処していけばいいのか。心の中では病気の進行が不可避なのは明白と知りつつ、目の前の患者さんに全力を尽くして接しなければならない仕事の重さと苦しさ。でも、患者さんは笑顔で迎えてくれる。患者さんのために頑張ろう。せめて患者さんには元気と明るさをすこしでもお分けしよう、と努力を重ねる著者。最後に第五部として、著者が日常の日々の中で考え、書き留めた思いを吐露。時に読み進むのが辛くなってくるなかで、著者の温かい心情にふれることができ心が安らぐ。なお、本書のタイトルは次の俳句に依る。
夫を待つ一日長し梅雨滂沱 とき子
- 定価:1575円(税込) 四六版 上製本 256頁
- ジャンル:詩集
- ISBN978-4-434-14220-8 C3036
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年5月10日発行
著者からメッセージ
この詩集のきっかけとなったのは、「ひとしずくの涙」の詩の患者さんです。ALSという病気のこの患者さんは、わたしが病室を訪れた時に本当にひとしずくの涙を流したのです。わたしはこの女性の気持ちを記録しなければならないと思い、その夜自宅で机に向かいました。そうこうしているうちに、詩の中でも登場するとき子さんが亡くなりました。私は彼女から、「人生とは何か」「夫婦の愛情とは何か」「芸術とは何か」「生きた証とは何か」「老いて生きる事とは何か」といった本源的な命題を考える機会を与えられました。三十年間に関わった多くの患者さんたちの生と死の有りようや過去が思い出され、五十ほどの詩を一気に書き上げました。
病院で仕事をしていると死は日常茶飯事です。取りわけ、長い付き合いの患者さんの死には、涙が後から後から溢れて来るものがあります。苦難の連続の闘病生活、その中にきらりと光る生の輝き、そして生きるという事の荘厳でかつ儚い営み。そうした様々な生きる有りようの「梅雨滂沱」を表現することが、今のわたしに託された、または課せられた患者さんたちの気持ちのような気がします。
著者紹介
1950(昭和25)年、神奈川県生まれ。詩人。作業療法士。教育学博士。1971年、朝日洋上大学(朝日新聞主催)の一員としてカナダとアメリカをさくら丸にて旅行する。1973年夏、南ベトナムの難民村におけるワークキャンプに参加。子どもたちのための遊園地を造る。1975年1〜3月、解放直前の南ベトナム各地の孤児院や難民村を訪れながら旅をする。3月8日には陥落直前のバン・メ・トゥオトを飛行機にて脱出。同12月、解放直後のラオスのビエンチャンを訪れる。1977年4月、ハノイ経由で解放2周年を迎えた旧サイゴン市を再訪。1979年、第一詩集『悲しみの蒼穹』上梓。1981年から作業療法士として現在まで病院に勤務。2005年、教育学博士の学位授与。2006年の年末から1週間、2008年も年末から1週間、ミャンマー南部・イラワジ・デルタの農村で医療ボランティア活動。神奈川県南足柄市在住。弓道弐段、柔道初段。妻と娘4人と猫1匹と暮らす。著書に、『悲しみの蒼穹』(自費出版)、『ベトナムに学ぶ 私が私であり続けるために』(風祭書房)、『ベトナムの揺れる黄昏』(2000年 朱鳥社)『筋ジストロフィーを生きる』(2006年 朱鳥社)『臨床実習指導者論─作業療法の臨床実習における学生の学びと指導者のあり方─』(2007年 朱鳥社)がある。
幕末の寵児 蘭之介活人拳 著者:北城小路

舞台は幕末の江戸、大坂堺港、長崎。御禁制品密輸に絡む悪を退治するオランダ公使館育ちの混血の風雲児、林田蘭之助の活躍を描く痛快人情「捕り物帖」である。蘭之介は段平振り廻す侍なんぞ親指一本で眠らせる「汲心流」の柔術使い。一方で江戸中の儒学者もかなわぬ語学力にてオランダ語教授所を開き、蘭法医学にも精通するという博学ぶり。それこそ「味方にしたら頼もしいが、敵に廻したらてえへんなお人」なのである。団子坂菊人形見物にきていた横浜居留地のイギリス商人が掏摸(すり)に遭い、蘭之介が助けたのを糸口に、朝鮮来聘使よりの将軍への献上品横流しの全貌を暴き、賄賂を稼ぐ役得輩を成敗する。命を惜しまず手助けするは館林藩柔術指南の郡次郎、忍びの者かすみ、ぼてふり(八百屋)のはだしの八兵衛、飾り職人の寅三とっつあん、凄腕の門弟たち…。巧みな展開の妙味が味わえる。「疾風のように一陣の風が巻いたように吹き、黒い影が通り過ぎたかのようにみえたと思った瞬間、六尺棒を振り上げた男がガクッ!と片膝を付いて顔から前のめりになって転張る」といった殺陣シーンが小気味よい。加えて江戸情緒と江戸っ子気質が温かな人情をにじませる。巻末には著者自らが作詞した主題歌、挿入歌がつき風趣を添える。
- 定価:1260円(税込) 四六判 上製本 264頁
- ジャンル:小説
- ISBN978-4-434-14296-3 C0093
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年4月8日発行
著者からメッセージ
本編の主人公は林田蘭之介である。母である千鶴は江戸本石町、長崎屋源右衛門の大店へ行儀見習いとして奉公に上がり、そこで将軍に目通りを許されて来日したオランダの公使カピタンのための宿舎のお座敷係として身の回りの世話を仰せつかる。そうこうするうちに公使のお手付きとなり、蘭之助を出産した。だが、母はオランダへ帰国する公使のあとを追い、ひとり公使館に残された蘭之助はその寂しさを湛えつつ、孤独な少年時代を送る。
やがて才色兼備な混血の侍に成長した蘭之介は、どこまでも武士道を貫き悪を正し、役職を利用して私腹を肥やす幕閣の粛清を行い、御禁制品を国内に持ち込み不当な利益を得る輩を成敗するのだ。そんな蘭之介のまわりには頼りになる人情味にあふれた仲間がたくさん集まってくる。
誠に痛快無比ではありませんか、蘭之介たち江戸っ子の、悪を憎み正義を正す心意気に共感する方々もおられるでしょう。役職を利用して私腹を肥やす現代の悪人腹への憤懣をたっぷりと込めたつもりです。登場人物を動かしながら楽しくて仕方がありませんでした。このような人物が現代の世の中に実在するといいですよね。
著者紹介
本名、柿沼宏。作詞家。埼玉県川越市生まれ。同在住。明治大学政治経済学部卒業。誰よりも川越を愛し、「川越音頭」「川越まつり」「小江戸桜音頭」「新河岸川音頭」「川越伝説合唱曲集」、赤間川に棲む小動物を主題とした「童謡と楽劇」、少年少女のための合唱風土記「川越市郷土芸能合唱曲集」などを作詞するなど、市の文化・観光に寄与。(社)日本作詞家協会会員。故郷音楽普及会会長。日本・ミャンマー歴史文化交流協会会長。著書に『唐桟幸次郎疾風旅』『御家人侠七郎 幕末江戸草子』(2002年 文芸社)『本所深川御家人くずれ』(2006年 朱鳥社)がある。
父のガダルカナル戦争日誌 著者:重野義夫 編者:重野正一

1919年生まれの父親が遺した戦記を戦後生まれの息子がまとめあげた。義夫氏は1939(昭和14)年に入営、1946(昭和21)年に復員するまでの戦地での体験、あふれでる思いを克明に記録しつづけた。復員後、何度も推敲された跡のあるその膨大な量のノートを、父亡き後、机のなかに見付けた息子は読みながら驚愕し、涙が止まらなかったという。戦地での体験を語りたがらなかった父は、あの激戦地ガダルカナルでの激闘で生き残った数少ない兵士のひとりであった。父はどういった戦況のなか、どうやって生き延びたのか? 1941(昭和16)年から1943(昭和18)年の手記部分を父の語録集を添えて編んだのが本書である。「心はいかに懊悩し、身はいかに憔悴しても、家族再会の日まで最後の一人になるとも生き延びてやる。自らを慰めて勇気を揮う。怖気に背中をヒヤヒヤさせながら…」(1943年1月1日、絶望の正月を送る)。戦争の実相である。
- 定価:1260円(税込) 四六判 並製本 144頁
- ジャンル:日本の歴史
- ISBN978-4-434-14209-3 C0095
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年3月31日発行
編者からメッセージ
父は手記のなかで「神経質なくらい身の回りに起こった事項に関心をもつ」ことと「自分から命を絶つなど、怖くてそんな度胸はない」ことを強調しているが、戦争では実はそういうことを信念としてもっていないと生き残れないのではないだろうか。
戦争において父は戦友の死に心を痛め、上層部のいいかげんな態度に怒りを覚え、内地の家族を思い、絶望と恐怖のなかで一日一日、一時間、一分一秒、死と隣り合わせになり生き抜いた。当時の父の心情を思うと察するにあまりあることばかりで切なく、泣いてしまうくらいだ。多くの偶然といくつもの幸運が重ならないと生き残れなかったと思う。
父は内地に帰ってきてからも常に亡き戦友を悼み、戦争そのものを辛い体験として振り返っていた。母と結婚し、幸せな人生を送っている時期も、戦争の思い出は壮烈な出来事ばかりであったようだ。
貴重な資料だけに私はこれを一冊の本にすることとした。
当時をしのんで、二度と戦争のない世にしてゆきたいものである。
著者紹介
1919(大正8)年3月16日生まれ。1933(昭和8)年、学校卒業とともに就職。1939(昭和14)年、入営のため退社。1940(昭和15)年、南方方面にて所属。1946(昭和21)年、復員、就職。その後、重野フヂエ(旧姓西川フヂエ)と結婚。2003(平成15)年、病気のため死去。
編者紹介
1949年1月10日、愛知県名古屋市に生まれる。同在住。1972年、愛知大学法経学部法学科卒業、1974年、日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科を卒業する。エレックレコードを経て、数多くの作曲作品を送り出す。代表作曲作品に、1971年 NHKテレビ あなたのメロディー「ひまわり THE Sun Flower」、1975年 同「みずいろのお日さま」、1977年 同「恋の並木道」、1975年 ヤマハポプコン最優秀曲「Adieu amour さよなら愛」、1976年 同優秀賞「雨の日にひとり」等がある。著作本に『心にひびく60の小さな感動物語 この曲を一曲いかがですか』(2002年 朱鳥社)『2,222 重野正一作曲の旅』(2007年 朱鳥社)『3,333 重野正一作曲の旅ファイナル』(2010年 朱鳥社)等がある。
後家足袋の記 著者:石川 柊

時は明治、大津に生まれ育ったお久が京都祇園の足袋屋へ奉公に出て、女足袋職人に成長する様を描いた中編小説である。終幕では遭難した京焼きの陶工である夫、豹太を探しに、有田・唐津・壱岐・対馬の窯跡をたどる旅に出る。奉公に出た先で起きる数々の事件、織りなす人の縁。「ひと、とき、ところの出会いが、生きることの針路をうまく決めてもくれるし、また、意に添わずとも決められてしまうもの」お久は羅針盤が指した運命を振り返りつつ、朱の径に分け入る決意をする。著者は日本の伝統的民俗芸能、工藝、歴史などを地域の人々へ語り継ぎ残す活動を重ねてきた。その過程で培った美意識や自らの思いを登場人物を借りて描写する。日本の文化のひとつである足袋への愛情、歳時記、風習が細部にわたり細やかに活写され、まるで活字が彩色されているかのように映像となって浮かんでくる。また、なめらかな響き、リズム感など、日本語の美しさを堪能できる1冊でもある。
- 定価:1800円(税込) 四六判 並製本 288頁
- ジャンル:小説
- ISBN978-4-434-14295-6 C0093
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年4月22日発行
著者からメッセージ
―きれいやわぁ
十歳の「お久」の目に映ったのは、清楚で温もりのある白足袋でした。
「さゝやさんの白足袋の精がうちを呼んだんです」
「ほうー、足袋の精がのう」
「へえ、うちは足袋職人になりたいんどす」
こうしてお久の一代記が始まるのです。
…お久は、踊り手の足元を懸命に追っていました。白足袋の美妙な運びだけで、歓喜も情念も、そしてものの哀れも表現されていたからです。素足では表せないこころの機微が、白足袋ひとつで芸として高められている…。足袋はいのちを含んだ芸の小道具でもあったのです。
…その指先が少し震えているようでした。それもそのはずです。引き上げた着物の裾からほっそりとしなやかな白い足がのぞき、楚々として涼しげに採寸台に載っているのですから。指のしなやかさはもとよりですが、甲の曲線に震えるような色香がありました。
…素足を読み切った加減の妙こそ、職人のこころと技のすべてです。
「糸一本の勝負やな」
かすかに触れ合う
著者紹介
1941年南アルプス市に生まれる。本名・修。國学院大学卒。北海道新聞記者。環境緑化に携わる。傍ら油彩(赤光社)、陶芸(深大寺咲窯)、挿花(清風瓶華)を学ぶ。著書・連載に「清少納言とランドスケープ」(芦屋倶楽部)「朱の旅」(同)『孤島燃ゆ 釜鳴屋平七物語』(2005年 朱鳥社)『孤高の才人 五老井許六』(2005年 朱鳥社)『潺々 芭蕉・五老井の流れ』(2006年 朱鳥社)『旅ハ風雅の花 旅客・五老井許六』(2007年 朱鳥社)「ふるさとの記」「丹波杜氏」「丹波焼」(ザ・サイプレスGCほか)あり。2008年度「日本自費出版文化賞」受賞。
心の居場所を探して −ひきこもりを通して考える開発的人間関係− 著者:河野憲一

いじめに続くシリーズ2作目。誰の心の中にも大なり小なり「ひきこもり」の気持ちが存在するもの。そのような心をもち、「ひきこもりたい」「ひきこもれない」と揺れ動きながら自己をコントロールしている。むしろ、完全に心の揺れを無くしてしまったら、人の心の痛みも理解できなくなってしまうのではないか。「ひきこもり」を自分と向き合うチャンスととらえ、強くなることを目指すのではなく弱い自分でいい、そしてほんの少し人の痛みも理解しようとする気持ちをもつことで、ひきこもりも軽減されていく。「ひきこもり」は学びであり、哲学の場である、と教育の現場に立つ著者は説く。第1章「ひきこもりの実態と背景」では、ひきこもることによるさまざまな困難、保護者や家族の思いへ目を向け、第2章「ひきこもりの解決へ向けて」では、ひきこもりからの脱却を困難視することなく、心のわだかまりを解きほぐす出発点を探る構成になっている。
- 定価:840円(税込)A5判 並製本 120頁
- ジャンル:エッセイ
- ISBN978-4-434-14219-2 C0095
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年3月31日発行
著者からメッセージ
子どもがひきこもると、真っ先に心配するのが母親であり、父親です。うろたえ、どうにもならないと感じたときには嘆きに変わります。さらには、自分の子が「ひきこもり」だと言うことは勇気がいります。しかし、黙って抱え込んでいてもプラスには転じません。まずどのような気持ちなのか、どんなに苦しんでいるのかを聞き、その本心を受け止めます。そのとき、援助の手を出す前に我慢して見守る心のゆとりをもちましょう。一呼吸置いて、当事者も周囲の人もそれぞれが自分の心の叫びに耳を傾け、自分自身の問題として受け止めていくのです。そうしていくうちに必ず活路は見いだせます。
本書が「ひきこもり」の本人およびその人たちを支える人たち、特に父や母への応援の書になればと思い、筆を執りました。現状に対して悲嘆にくれるのではなく、共に広く学びを得て豊かな人間観を育んでいければ幸いです。
著者紹介
略歴/1954年、大分県に生まれる。1977年、関西外国語大学卒業。1980年、関西外国語大学大学院修了。1991年、兵庫教育大学大学院修了。現在、兵庫県立阪神特別支援学校教諭。著書『自己実現への英会話−ホームステイ&恋人・仲間づくり−』(2002年 朱鳥社)『心をつなぐ英会話−英会話とともに自分の心と向き合う7日間−』(2004年 朱鳥社)『心で学ぶ人間福祉入門−実践ワーク−』(2007年 朱鳥社)『心の悲鳴に耳をすます−いじめを通して考える開発的人間関係−』(2009年 朱鳥社)
地蔵の森 我が人生の軌跡 著者:猪垣 博

93歳翁による自分史語りである。播州の奥山で山賤暮らしをする祖父母のもとでの孤独な生い立ち。青大将相手に過ごした幼少年時代への郷愁。心憂しきときの心の拠りどころであり、母の懐がわりでもあった地蔵の森での因果因縁。やがて念願の大陸満州国へと旅立っての青年時代。傀儡と真実が葛藤する世界のはざまに夢を託す、時代の異端者としてのロマンチシズム、はぐれ狼さながらの無頼な生き様。白系ロシア娘との国境を越えた恋、強いられた苦渋の選択。終戦により日本へ引き揚げてからの紆余曲折…。激動の時代を生き抜いた、苦悩の叡智が捉えた歴史の真実とともに、波乱に富んだ壮絶なドラマが描き出される。終章では今現在の人生観、老人観を吐露。通所する高齢者福祉センターに、心の奥底にある地蔵の森の偶像を見るという著者の心象風景は哲学的境地にまで至り、示唆に富む。人生終末期における心安らぐ居場所はどうやって見つけるべきなのか、理想はどうあるべきなのか。
- 定価:1260円(税込)四六判 上製本 284頁
- ジャンル:エッセイ
- ISBN978-4-434-14210-9 C0095
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年3月31日発行
著者からメッセージ
九十歳を過ぎた私が、人生終末期の貴重な時空をどう生きるべきか、の視点に立って筆を執ったのがこの本である。一方で、九十歳を過ぎた現在の自分の在り方について書くのだから、百歳シニアに対する生き方については、精神的にも、肉体的にも、これを定義づけられるものを言い表せると確信していた。
ところが、書き始めるとそうはいかない。九十歳の脳は私の言うことを聞かない。年とともに枯渇畏縮した脳みそは未来に楯突いて過去に閉じ籠もり、選択肢のない余命の空間を右往左往するばかり、百歳を生きる道に選択肢はないのか? 自力か、他力か、それとも悟りの境地で終わるのか? 卒寿を過ぎた人間に生き方を説くのは死に方を説くが如し。
私はその死に方を教わるべく、祖父の故里である地蔵の森に帰ることにした。こうして自らの幼少年期からの軌跡をたどる心の旅をし、本書を書き上げた。まさに遺書を書き上げた思いである。
私の心のなかにはまだまだロマンもあれば修羅場も見える。これまでは社会のための自分に生きてきたが、これからは自分のための社会に生きるつもりである。
著者紹介
1917年、兵庫県生まれ。旧満州国新京商業第二本科卒。満州労務管理教習所修了・満州炭鉱(株)総務部統計科勤務。後、満州書籍(満配)教科書課に移籍。1942年、満州国奉天市に満州出版興行(株)を創立。児童向け出版を主とし満州児童文化研究所を開設、児童文化活動を始める。「躍る霊魂」満州新聞掲載など、大陸をテーマにしたドキュメンタリーやエッセイを発表する。「新老人の会」会員。 著書に『老人革命』『蜃気楼青春「ファイヤの日記」』『藪鶯』『はぐれ狼』(新風舎)あり。
利休・織部・遠州の茶碗 樂茶碗は茶碗ではない? 著者:実方浩信

茶の湯に親しみ、やきものに魅せられた著者によるやきものシリーズ三作目。二つの日本文化の楽しみ方を紹介した「日本人の特権 やきものと茶の湯」「無名茶碗 埋もれている名碗を掘り出す」に続き、本作では自らの直感、洞察力や想像力を駆使し、茶碗に込められた利休・織部・遠州の真髄に迫る。どういうわけでそのようなものが生まれたのか、何故そのような形をしているのかといった種々の茶碗に関する疑問をいつも頭の片隅に置きながらいろいろ見たり読んだりしていると、ある時ふっとアイデアがひらめく。そして、自由に発想をふくらませてみる。長次郎樂茶碗は茶碗なのか? 織部茶碗は何故あれほど歪んでいるのか? 樂茶碗が先か美濃茶碗が先か? 遠州の「綺麗さび」は本当に遠州好みか? 等々の疑問を考察し、まとめたのが本書である。美術館所蔵や愛用のやきものの写真、イラストを使っての懇切な解説は、やきものを五感で味わいつくす楽しみ方を教えてくれる。
- 定価:1155円(税込)四六判 上製本 88頁
- ジャンル:趣味
- ISBN978-4-434-14064-8 C0076
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年2月1日発行

著者からメッセージ
利休・織部・遠州の茶碗を先入観なしで静かにじっと見ていると、巷間、一般に言われていることは本当だろうか。確かにそれらは、誰もが納得できる常識的な考え方ではある。だが、見れば見るほど、事の真相はそのようなものではなく、もっと別のところにあるのではないか。そのようなことが出発点となって本書はできあがった。私としては、自分の眼や感性というものをどこまでも大事にしていきたいと思うのである。
利休・織部・遠州の残したやきもの、特に茶碗について、はっきりとした資料的裏付けがないため専門家なら言わないであろうという私独自の考えを述べてきた。そのためにかなり自由な発想ができ、自分としては書いていてかなり楽しかった。しかし常に頭の片隅には、明らかな事実の誤りは犯してはならないという思いがあり、調べられる範囲で調べたつもりである。もし、記載内容に誤りがあればご指摘いただければ幸いである。
著者紹介
1962年、東京生まれ。茶の湯からやきものに興味をもち、やきものの産地を訪ね歩く。
著書:『日本人の特権 やきものと茶の湯(日本図書館協会選定図書)』『無名茶碗 埋もれている名碗を掘り出す』(ともに朱鳥社)
孫に伝えておきたいおじいさんの知恵袋シリーズ2 陰陽相対の自然法則に学ぶ「台所は薬局・食物は薬」 著者:内海正彦

孫に伝えておきたいおじいさんの知恵袋シリーズ好評第二弾。接骨医、ヨガ国際講師として世界14カ国を講演、「自然学園けんこう村」塾長として農業とヨガを指導、と長年にわたり健康指導をしてきた著者が後世に遺したいメッセージとは? 昔の自然生活から学ぶ「心と体の健康法」を説いた前作に続き、昔から日本人の心と体を養ってきた醤油、梅干し、玄米、糠漬け…といったひとつひとつの食材が、生命の糧としていかに優れたものであるかを教えてくれる。病を抱え悩む人たちへの長年の豊富な体験指導から導き出された、たとえばガンなどの腫瘍に効果を発揮した「はとむぎ」の例など、具体的な症例を示しながらの論説である。加えて、研鑽を積んできた東洋医科学の知識をもとに陰陽相対・相反の調和という自然法則について解き明かす。陰陽というまったく相反の調和がとれたときこそが「自然」であり「健康」な状態である。手に入れるためにはどう生きればよいのか、がわかる。
- 定価:1260円(税込) 四六判 並製本 268頁
- ジャンル:エッセイ
- ISBN978-4-434-14063-1 C0095
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2010年1月9日発行
著者からメッセージ
食生活の指導をするために私は世界各地を講演して回り、現地の人と話をするうちに、食生活の仕方が特有の個性をつくりだすことに気がついた。どのような環境で何を食べて育ったかは、姿形に大差はなくても人間味という心の在り方として表に出るようだ。
何をどのように料理して食べると、人の心と体が、一生の生命がどのように養われるか、それを教えたのが本書に述べる「陰陽相対の調和」であり、「身土不二」「食育」という言葉の真の意味である。病気になって病気を治す科学的医療の前に、病気にならない昔からの当たり前の自然生活をすることが大切だ。格別な知識もいらないし、国家財政を圧迫するようなお金もかからない。
このことを伝えないで死んだら私が生きてきた甲斐がない。そんな思いでペンを運んできたことを察してほしい。この2冊目に書いた内容は、おじいさんが八十年にわたって貯えた何よりの財産である。活用すれば、孫たちにとってもすばらしい財産になるだろう。
著者紹介
1930年、広島県府中市に生まれる。広島県立府中中学校、大阪医学技術専門学校を卒業後、大阪市立医科大学付属病院、国立福山病院に勤務。1955年、府中市にて接骨院を開業。
1972年より沖正弘師主宰、宗教法人ヨガ修道場の国際講師を委嘱され、日本各地、アメリカ、ブラジル、オーストラリア、台湾、オランダなど、世界14カ国を巡回講演。
1981年より財団法人広島県社会保険協会の健康づくり事業講師を委嘱され、県内の企業、年金受給者協会、老人会、PTAなど各種団体の巡回講演をする。
1996年、静岡県下田市に「自然学園けんこう村」を開設。農業とヨガの指導をする。
2002年、哲学堂古江老人ホームへ入居、著作に専念する。
主な著書に、『ヨガ育児法』『ヨガ養正法』(日貿出版社)『陰と陽の健康法』『台所は薬局 食物は薬』『捻挫と骨折の予防と治し方』『子供を駄目にする学校給食』『土と緑の健康法』『陰と陽の健康法・四十歳からの生きざま死にざま』(白揚社)『生きた宗教を求めて』(文芸社)『自然から学んだお爺ちゃんの知恵袋』『老いた人と支える人の楽園と生活設計』(新風舎)『孫に伝えておきたいおじいさんの知恵袋シリーズ1 昔の自然生活から学ぶ「心と体の健康法」』(朱鳥社)あり。
戦記 天井の節穴 著者:山田重夫

2004(平成16)年3月、著者はふとしたことから末娘と軍服に付いている徽章の話をしたという。「航空兵はプロペラの徽章、船舶兵は錨の徽章を軍服の右胸に付けるんだよ。俺のように水上特攻隊になると、錨の徽章の上に楕円形で真ん中のハンドルの周りに桜の葉っぱと蕾を配した徽章を付けるんだよ」と徽章を付けて撮った写真を見せる。これまで誰にも忌わしい軍隊時代の話をしたことがなかったのに、それを契機に戦時下の中学時代、志願して入隊した軍隊時代、終戦後の自分の体験を書き残そうと思い至る。私は特攻隊要員として爆雷投下訓練中に日本人として最初に原爆のキノコ雲を見た。8月15日出陣と決まるも終戦となり無事復員した私に、入隊前夜に見付けた天井の節穴が「お前はもう死ななくて良くなったんだ」と語り掛けているようだったと。唯一の情報源だったという「おふくろの手紙」が戦時下の庶民のありのままの世相をも照射し、微細に戦争の実相を語る。
- 定価:1470円 四六判 上製本 416頁
- ジャンル:日本の歴史
- ISBN978-4-434-13490-6 C0095
- 発行:朱鳥社 発売:星雲社
- 2009年10月20日発行
著者からメッセージ
本書は、2004(平成16)年4月から約4年にわたってこつこつ書き溜めたものである。粗原稿を普通の紙に書き、それを四百字詰め原稿用紙に清書した。
終戦後、59年も経ったのである。もっと前であったなら記憶も定かで、内容も充実したと思われる。一番残念だったのは、中学時代から付けていた薄黄色の表紙の日記帳を無くしてしまったことである。入営する時にも持って行った。何度も、日記帳があればと悔やんだ。
私が実家を出た時、小学時代、中学時代、軍隊時代の物は殆ど実家に置いたままだった。そして、おふくろが兄の家に移り実家が消滅した時、私の物を含め総てが失われてしまった。終戦後、私自身が生きていくことで精一杯で、古い持ち物に執着がなかったためでもある。ただ、面白いことに軍隊から持ってきた雑嚢、飯盒、水筒、戦闘帽、軍服、巻脚絆、毛布、軍靴の中、巻脚絆だけが今も私の手元にある。どうして巻脚絆だけを持ち続けてきたかは分からない……。
著者紹介
1928(昭和3)年福島県生まれ。陸軍船舶兵長。日本大学・東北大学両校卒業。中東・東欧・東南アジア・南米を含む海外プロジェクトに従事。現在は、技術系コンサルタント会社経営を引退し、執筆活動に勤しむ。
著書に『バスラ風土記 イラクの歴史・文化・人々』(朱鳥社刊)あり。
お問い合わせ
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- 編集部:03-5358-3984
- FAX:03-5358-3986
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